ゆとり技術者と建築家で建てる都市型住宅

Atrium House

ゆとり技術者と建築家で建てる都市型住宅

防火地域の建築制限の抜け道の補足

お久しぶりです。

先日質問頂いたので記事にしておきます。

 

はじめに

防火地域では3階建て以上もしくは延床面積100㎡を超える建物は耐火建築物にしなければなりません。

 

以前、1つの住宅を母屋と附属建築物(離れ)に分けることで、超高額な耐火建築物になるのを回避するという抜け道を紹介しました。


我が家はこの構造にすることで、住宅を延床100㎡以下に抑えながら6坪(12帖)弱の広々としたルーフテラス(バルコニー)を2階リビングに隣接して設置することができました。

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質問内容

質問内容はこの過去記事内の検査機関へのQ&Aの1つ

 

Q3.

住居の2階から附属建築物の屋上に出られる構造でも附属建築物に該当するか 。

A3.

住宅部の2階から直接車庫の屋上へのアプローチがある場合、一体利用となるため附属建築物にならない。

しかし、車庫の屋上周りに手摺がなく、屋根の用途のみであれば附属建築物になる。

ただし、1階(車庫内やアプローチ側)から屋上への経路があれば、車庫の屋上に手摺があるのは不思議ではない。

 

を具体的にどのように回避したかというもの。

このQ&Aは附属建築物の屋上を母屋のテラスとして活用するための要となるものです。

 

 

解説(前編)

先のA3を要約すると、

・住宅部(母屋)から車庫(附属建築物)へのアプローチがあるとNG

・車庫の屋上が手摺りがなく屋根の用途のみならOK

・1階から屋上への経路があれば手摺りがあってもOK

と書いています。

 

つまり附属建築物の屋上をテラスとして活用するためには

・母屋から附属建築物の屋上へのアプローチがない。

・1階から屋上への経路がある。

この2つを満たせば良いことが読み取れます。

 

2つめの「屋上への経路」は外から梯子や脚立を置くスペースを用意するだけです。

問題は1つめの「母屋から附属建築物の屋上へのアプローチ」です。

 

普通に考えればアプローチが無ければテラスとしての活用は不可能です。

ここで言う「アプローチ」とは母屋と附属建築物を繋ぐ「渡り廊下」や「橋」を指します。

つまり「渡り廊下」や「橋」で繋がず、隙間を空けて飛び移る構造ならOKです。

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※引用:ミッション:インポッシブル/フォールアウト

 

法的にはOKと言っても飛び移るのは危険ですし、2階リビングと繋がるテラスとは言えないですよね。

ここでポイントとなるのが「建築物」と「家具」の違いです。

 

少し脱線します。

 

 

「建築物」と「家具」の違い

これは我が家にあるロフト階段です。

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これは「建築物」でしょうか?

 

ロフトに上がるための階段で手摺りもあるんだから「建築物」でしょ。

と思う方が大半だと思います。

 

実はこれ、「家具」です。

なので正確に言うと「ロフト階段機能付きの収納家具」です。

 

我々の様な素人は勘違いしがちなのですが、「建築物」と「家具」の違いは建築物と一体となっているかどうかです。

 

このロフト階段収納家具は転倒防止のために壁にビス止めしているものの、基本的にはフローリングの床に置いてあるだけ。

どこの家にもある箪笥と同じです。

どのような機能があっても「家具」なのです。

 

建築基準法やそれに基づく条例はあくまで「建築物」に対してのものであり、「家具」は対象外です。

なので法や条例に準じているかを検査するための確認図面にも当然「家具」は描かれません。

 

話を戻します。

 

 

解説(後編)

前編で母屋と附属建築物の間には「渡り廊下」や「橋」を設けず隙間を設ければOKと書きました。

これは「建築物」の話です。

 

もう分かったと思います。

 

この母屋と附属建築物に「渡り廊下」や「橋」としての機能を持った「家具」を置いてやれば、実生活において何の不都合もなく成立させることが可能なのです。

 

 

我が家の場合

我が家は母屋と附属建築物の間には20cm程度の隙間があります。

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我が家は附属建築物が母屋に潜り込んだ構造なので分かりにくいですね。

 

この隙間の上に母屋と附属建築物を渡す形でウッドデッキ風の「家具」が置かれています。

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母屋側のフローリングに合わせて作って頂いたので、これが置いてあるだけの家具と気付ける方はいないと思います。

 

ちなみにフローリングとウッドデッキ家具が同一な様に見えますが、フローリング側が90mm幅のチーク無垢材で、ウッドデッキ家具は87mm幅のコウヤマキのオイル塗装となっており、実は幅も材質も異なります。

屋外に置かれるウッドデッキ家具は水に強い木材と、水を含んで膨張しても大丈夫な様に隙間を設けるのがポイントだそうです。

 

 

さいごに

建築基準法は近年厳しくなったとはいえ、ザルな部分も多く存在します。

建築設計事務所建築基準法を知り尽くし、回避する術を知ったプロです。

都市部で活動している建築士なら猶更です。

例えハウスメーカーの営業マンに法的にNGと言われても、建築設計事務所ならなんとかしてくれることもあるでしょう。

 

家づくりは人生で1度きりです。

後悔のないようにしましょう。

 

我が家の間取図を貼っておきます。

ちなみに1階から屋上への経路ですが、アプローチ(灰色)から梯子を掛ければ、理論上はルーフテラス左側に上がれるようになっています。

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他にも防火地域、準防火地域の方に役立つ情報を書いていますので、参考にしてください。

 

 

 

ここまで読んで頂きありがとうございます。 

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