ゆとり技術者と建築家で建てる都市型住宅

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ガレージシャッターの断熱性と気密性について

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ビルトインガレージ住宅を考える多くの方々を悩ますのがこの問題。

私の見解を述べます。

 

結論

いきなりですが結論です。

 

ガレージシャッターに断熱性と気密性は期待すべきでない。

 

正直、メーカーはこの問題について真摯に向き合っているようには思えません。

その証左にどこのメーカーも熱貫流率(U値)の様な具体的なデータを公表しておらず、曖昧な表現に留めています。

※三和シャッターはユーガのみU値の記載有

 

しかし、これはシャッターが取り付くガレージ(車庫)の機能を考えると当然の様に思えます。

 

断熱と気密の必要性

ガレージの機能は

車やバイクを駐めておく

です。

 

通常、ガレージはもっぱら人が滞在することはありません。

たまにしか人がいない空間の断熱性を上げる意味はないです。

そもそも一般的なガレージは居室と違って床下に断熱材が入らないので、居室と同じような断熱性を確保するのは非常に困難です。

 

気密性についても、車やバイクは排気ガスを出すし、整備をするなら揮発するガソリンやオイル、塗料もあるため、ガレージには十分な換気性能が必要です。

換気性能と気密性は相反するものなので両立するのは非常に困難です。

 

これらのことから、ガレージに取り付くシャッターに断熱性と気密性を求めることはナンセンスなように思います。

ただ、「非常に困難」と書いたのは不可能ではないということです。

頑張れば(お金を積めば)なんとでもなるのがこの世界です。

 

とは言っても、ガレージと住宅が一体となったビルトインガレージ住宅を考える上で、ガレージ部はともかく住宅部の断熱性や気密性を悪化させたくない人は多いでしょう。

高気密・高断熱(高高)住宅なら猶更です。

 

高高住宅のビルトインガレージ

高高住宅においてはビルトインガレージは「屋外」と考えるべきです。

一条工務店でも同じことを言われました。

 

屋外扱いとは住宅とガレージの境界となる壁や天井は断熱材を入れて、出入口は外部用ドア、ガレージの換気は局所換気にするということです。

別棟のガレージが屋外にあるのと同じことになるので、ガレージの気密性や断熱性は住宅に影響を与えません。

当然、シャッターの性能も無視できます。

 

ビルトインガレージ住宅のUA

我が家の別棟ガレージをビルトインにした場合のUA値を計算してみました。

屋外扱いの場合は別棟と同じUA値です。

※開口部は文化シャッターのユーガの値(1.37[W/㎡・K])を使用。
 ユーガはウレタン入りなので断熱性は比較的良いと思われます。

 

屋外扱い:0.52 [W/㎡・K]

屋内扱い:0.61 [W/㎡・K]

 

UA値は数字が低いほど省エネです。

当然ですが屋内扱いにすると断熱性能は悪化し、4~7地域のZEH基準が未達になりました。

 

ちなみに中空アルミの業務用シャッターのU値は5.6~5.8[W/㎡・K]なので、ウレタンの無いシャッターのU値も同じレベルだとすると、屋内扱いのUA値は0.75[W/㎡・K]まで悪化します。
※三和シャッターのスパイラルの値

 

高断熱住宅においてUA値が0.1~0.2[W/㎡・K]増加するのは致命的です。

1~3地域なら省エネ基準をクリアすることすら困難でしょう。

 

気密性についても業務用の気密シャッターがA-3等級を売りにしているので、普通のシャッターはA-2等級以下と予想できます。

A-2等級は現代の建具では屋内ドアレベルなので、屋内扱いにすると住宅のC値は相当悪化するでしょう。

 

高高住宅においてはガレージは屋外扱い以外の選択肢はないと言えます。

 

さいごに

普通のレールから脱線すると、お金のかかる世界です。

どこまでガレージの気密性、断熱性が必要かを考えて判断してください。

 

本当に必要な人には冷蔵・冷凍室用のシャッターという手もあります。

例えば三和シャッターのNSチルドミニはU値0.68[W/㎡・K]と、ガレージ用とは比較にならないレベルの断熱性能です。


 

ここまで読んで頂きありがとうございます。 

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